
はじめに 〜リリース禁止条例と私たちの自由、そして命のあり方を問う〜
私は、「リリース禁止条例」に対して違憲訴訟を提起した原告です。
釣り人として、そして日本に生まれ育った一国民として、「この規制は本当に正当なものなのか?」「誰のための規制なのか?」という根本的な問いを持ったことが、この裁判の始まりでした。
この問題は、単なる釣りの話ではありません。
それは、自由や表現、職業選択といった憲法上の権利に深く関わり、また、子どもたちの教育や、命の扱い方といった社会全体の価値観を問い直す問題でもあるのです。
たとえば、「リリース禁止」という規制により、私たち釣り人は、釣った魚を逃がすことすら許されず、「殺さなければ違法」という扱いを受けることになります。
しかし、本当にそれが正しい命の扱い方なのでしょうか?
私たちは、その魚を食べるわけではありません。
欧米や日本のルアーフィッシングでは、多くの場合、釣りという体験を通じて自然とふれあい、感謝の気持ちを込めて魚を元の水に帰しています。
ところが規則は、そうした行為すら「違法」とし、結果的に、人間の都合で、食べもしない命を無意味に奪うことを強制しているのです。
それは生き物への冒涜ではないでしょうか?
また、そのような姿勢を大人が見せ続けることが、子どもたちにどのような価値観を植え付けるのかを、私たちは真剣に考えなければなりません。
現在の教育現場や環境行政では、「外来種はすべて悪」「釣った外来魚は殺すべき」という単一的な価値観が無批判に広がっています。
ですが、専門的な観点から見ても、科学的に正確なデータもない状況での、こうした前提には大きな疑問が残ります。
そしてなにより、多様な生命とどう向き合うかという倫理的な視点が、著しく欠けているのです。
このページでは、私たちが実際の訴訟で提示した憲法的・法的な論点に加え、科学的根拠の欠如、行政の矛盾、そして命や教育の観点からの倫理的問題を、資料に基づいて整理し提示していきます。
「リリース禁止」という一見正しく見えるシンプルな規則の背後には、その背後でそれを仕事にして私服を肥やしている専門家の存在や、間違った社会全体の価値観、未来のあり方を揺さぶるような、複雑で本質的な問題が潜んでいます。
一人でも多くの方に、今こそこの問題を、自分自身のこととして考えていただきたいと願っています。
リリース禁止裁判 原告 浅野大和
【1. 憲法上の論点】
- キャッチ&リリースの規制の違憲性
・内閣法制局の見解:特定外来生物法では、キャッチ&リリースは憲法上の理由から規制できないとされている。
・実例:平成17年松野頼久衆議院議員による質問主意書に対して、小泉純一郎総理大臣及び内閣法制局は「釣りそのものおよびキャッチアンドリリースは規制対象ではない」と明言(内閣衆質162第46号)。
・憲法の根拠:憲法第13条「個人の尊重と幸福追求権」、第21条「表現の自由」等に基づくと解釈可能。
【2. 法律上の論点】
- 特定外来生物法の適用の妥当性
・特定外来生物法の制定(2005年)以降、オオクチバスが一律に「防除対象」とされているが、その生息状況が大幅に変化していることから、現在の取り扱いが実態と乖離している可能性あり。
・2003年の皇居堀のかいぼり調査では、オオクチバスは全体の0.59%に過ぎず、「在来種が食い尽くされた」との主張と矛盾。
・農薬(ネオニコチノイド系)による淡水魚の激減が主因とする指摘もあり、「外来魚=悪」という一元的な評価は再検討の余地あり。
【3. リリース禁止条例の問題点】
- 実効性と合理性の欠如
・環境省や水産庁、警察庁はこの20年間にオオクチバスの違法放流は一件も確認されていないと明言。
・リリース禁止条例は**「違法放流防止」や「防除のため」という目的と整合しない可能性**がある。
- 表現の自由・営業の自由の制限
・釣りに関する活動(特にバスフィッシング業界)は、「表現の自由」(憲法第21条)や「職業選択の自由」(憲法第22条)に基づく正当な産業活動。
・これを不当に規制する条例は、「必要最小限の制限」を超えており違憲と主張できる可能性がある。
【4. 行政の対応の不整合】
- 一貫性の欠如と科学的根拠の乏しさ
・オオクチバスの密放流は一件も確認されていないという事実と、条例・法規制の継続が矛盾。
・科学的調査(全国280水域の調査で95%以上で減少傾向)を無視し続ける姿勢は、憲法違反及び行政判断の合理性の欠如として争点となり得る。
・オオクチバス等の外来魚種が在来種を駆逐すると言われているが、法律が施行されて20年間、人間を含む全ての動物の食物連鎖の範疇の中で、全世界で在来種・外来種が共存している事例が大半。
【5. 差別的・恣意的な種指定の問題】
・生物の「善悪」を人間の都合で決めることの人権的・環境倫理的問題。
【6. 外来種導入の経緯】
・オオクチバスやブルーギルが日本に導入された経緯について
【7. 生物多様性条約について】
・1992年、ブラジルのリオデジャネイロで生物多様性条約が出され、その流れで日本でも特定外来生物法ができたが、人間の価値観だけで外来種を悪とし、全面駆除してしまうやり方は本当に正しいのか?

◆ 最後に 〜釣り人による、再びの挑戦〜
私たち釣り人は、これまでの活動や裁判を通じて、多くの矛盾や不合理、そして命や自由に対する軽視を目の当たりにしてきました。
条例や法律は、国民である釣り人の声を無視し、中途半端な科学的根拠で、ただ既成概念に従って拙速に規制を進めています。
そこにあるのは、自然や命、そして釣り人の自由を守ることではなく、「憎悪に満ちた一部の専門家によるイデオロギー」にすぎない。
それでも、私たち釣り人は諦めません。
釣り人による釣り人の自由を守り、命と向き合いながら自然と共に生きる権利を否定されたままでいいはずがありません。
釣り人である私たちが、子どもたちに命を無駄にすることを強いる社会を未来に残していいはずもありません。
だからこそ、釣り人としての誇りを胸に、もう一度法廷で問い直そうと考えています。
この国の法が、本当に釣り人の自由と命の尊厳を守るものなのか。
そして、リリース禁止という規制が、本当に正当なものなのかを。
これは単なる法律や条例との争いではなく、釣り人による「命」と「自由」と「教育」のあり方への真剣な問いかけです。
理不尽な規制に沈黙することなく、釣り人自身の声と理性で、それを正していく。
釣り人である私たちは、その覚悟を持って、再び立ち上がる準備を進めていきましょう。