特定外来生物オオクチバス等に係る防除の指針(見直し)

特定外来生物オオクチバス等に係る防除の指針(見直し)

  1. 目的

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以下「外来生物法」という。)は、特定外来生物による生態系等に係る被害を防止し、生物多様性の確保、人の生命及び身体の保護並びに農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することを目的として、平成16(2004)年6月に公布されました。

平成17(2005)年4月22日には、オオクチバス・コクチバス・ブルーギル(以下「オオクチバス等」という。なお、「オオクチバス」には「フロリダバス」を含む。)が特定外来生物に指定されました。そして、防除事業を効果的・効率的に進める上で、多様な主体の参加との連携の必要性や適切な目標設定、防除手法に係る知見・情報を正確に伝達し、防除実施計画の策定方法について明示するため、環境省及び水産庁は同年6月3日に「オオクチバス等に係る防除の指針」を策定しました。

オオクチバス等については、全国に広範囲に分布し、生態系や水産業に被害を及ぼしています。このため、本指針等を踏まえ、各地で防除事業が実施されてきました。

オオクチバスとブルーギルの繁殖により漁業や生態系が被害を受けていた一定の地域においては、オオクチバス等の生息量が大幅に減少するなど、状況の改善も見られます。一方で、コクチバスについては、「河川水辺の国勢調査」によれば、分布の拡大が続いているとの報告があります(巻末参照)。

外来生物法の施行から約20年が経過して、社会における外来生物問題に対する認識が広まり、その防除技術も進歩してきました。令和4(2022)年度には、外来生物法の改正により防除に関する各主体の責務規定が新設され、被害状況等の実態把握や地方公共団体及び民間団体等と連携した外来生物対策の推進・円滑化を図ることとされたほか、令和5(2023)年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」では、2030年までにネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)を達成するという目標も掲げられました。

こうした状況の変化を踏まえ、今般、「オオクチバス等に係る防除の指針」を見直しました。この指針を基に、コクチバスの分布拡大の防止等、多様な主体による防除の取組を通じ、生態系被害等の防止が図られることを目指します。

  1. 防除の優先度が高い水域の考え方

(1) 生物多様性保全の観点から重要な水域

オオクチバス等による被害は、直接的には魚類、昆虫類、甲殻類を捕食するほか、魚食性の水鳥類、幼生が魚類の体表に寄生して育つ二枚貝類にも間接的に負の影響を与えるなど、多様な生物に及びます。これらのうち、水域間の分散能力が低いため捕食等による直接的な被害を特に受けやすい水生生物は魚類や甲殻類であり、これらの生息地における防除が特に必要です。以上を踏まえ、生物多様性保全の観点から重要な水域は以下のとおりです。

  • 全国規模で見て絶滅のおそれのある種(環境省レッドリスト掲載種など)の生息地における防除は優先度が高く、各地域で絶滅のおそれのある種(都道府県版レッドリスト掲載種など)の生息地、全国的な観点から魚類、甲殻類、昆虫類の固有種が多く生息するなど、地域の特性を示す生物相が良好な状態で保全されている水域においても、早急な防除が必要です。
  • かってこのような要件を満たしていたものの、現在は在来生物が激減又は絶滅してしまったような水域についても、地域の状況などを勘案し、生息地復元に向けた防除の必要性を検討する必要があります。
  • 国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録された湿地や環境省が選定した生物多様性の観点から重要度の高い湿地等の水域、自然共生サイトの水域なども、防除の優先度が高いと考えられます。

(2) 内水面漁業で重要な水域(漁業法に基づき海面に準ずる湖沼を含む)

オオクチバス等による水産資源への被害が認められる水域及びオオクチバス等による被害の発生源となっている水域は、防除の優先度が高いと考えられます。止水域や河川下流域においては、オオクチバスとブルーギルによる食害が継続しており、また、水産資源として重要なアユやサケ科魚類などの漁場となる河川の中・上流域においては、コクチバスの分布拡大が問題となっており、それぞれ対策が必要です。

(3) 予防的な観点から防除が必要な水域

オオクチバスとブルーギルは止水域又は緩流域に定着しやすく、コクチバスは河川の中・上流等の流水域にも侵入・定着することがあるため、定着し得る水域は、河川上流から下流域、天然湖沼、ダム・人造湖、ため池・水路、公園等の池、ビオトープなど様々です。これらのうち、高密度に生息する水域や頻繁に水の流出入があり他水域への逸出の危険性が高い水域については、防除の優先度が高いと考えられます。

また、侵入初期の水域についても、定着が進行する前に早急な防除の実施が必要であり、防除の優先度が高いと考えられます。さらに、現在は未侵入であっても、定着の可能性が想定される水域では、新たな侵入を阻止するための対策が必要です。

特に近年分布を拡大しているコクチバスについては、まだ侵入初期の場所も多く、その一方で、気候変動による水温上昇も今後の分布拡大に影響する可能性があるため、今の段階で迅速に防除を実施して分布拡大を抑えることが必要です。

  1. 目標の設定

外来生物法は、我が国の生物多様性の確保と農林水産業の健全な発展等に寄与することを目的としています。法に基づく防除の目的についても、単に特定外来生物を排除することにとどまらず、環境改善対策も併せて実施し、地域の生物多様性を保全することを上位目標とすることが重要です。具体的な水域ごとの防除については、対象水域の実態に応じ、適切な防除段階及び普及啓発についての目標を各防除主体が決定して実施することが必要です。

(1) 侵入又は分布拡大の防止

生物多様性保全等のために防除の優先度が高い水域では、オオクチバス等の定着の可能性が想定される水域において侵入を予防するため、監視体制の整備と早期発見・通報体制、初期防除を機動的に実施できる体制の構築を目標に設定することが重要です。また、現在オオクチバス等が侵入している水域は、逸出防止対策の実施体制の構築を目標に設定することが重要です。

(2) 被害の低減化

防除の優先度が高い水域では、地域の実情に応じ、完全排除又は低密度管理という目標を設定することができます。完全排除が難しい水域では、場所の特性に応じた効率的な防除手法を組み合わせることで低密度管理の実現を目指すことが望ましいと考えられます。防除手法の選択に当たっては、その特性や留意すべき事項を踏まえ、地域において最も適切な手法を選択することが重要です。

このようにしてオオクチバス等による被害の低減化を図る際には、環境改善対策も実施し、個体数低減化との相乗効果を促進することが効果的です。

個体数低減化や環境改善対策等の実施前には「モニタリング(現況調査)」を行うほか、実施後には、オオクチバス等の生息状況と被害を受ける側の在来生物の生息状況の動向に係る追跡調査を実施して防除の効果を検証し、その結果を以後の対策にフィードバックすることが必要です。

(3) 普及啓発

オオクチバス等が特定外来生物に指定されてから約20年が経過し、各地で防除事業が実施されてきたにもかかわらず、特にコクチバスの分布拡大が続いている状況において、防除の実施に当たっては、地域住民や地域関係者、遊漁者等の理解と協力を促進するために、看板やパンフレット等も用いながら、対策の必要性や規制等について効果的に普及啓発を行うなどの目標を定め、広報等も活用して計画的に推進していくことが必要です。

はい、承知いたしました。文章の内容はそのままに、体裁を整えます。

4. 効果的な防除手法

(1) 侵入又は分布拡大の防止

① 侵入の防止と監視

定着水域・未定着水域を問わず、オオクチバス等の侵入監視と早期発見・通報体制を構築し、新たな侵入を阻止することが重要です。生物多様性保全等の観点から防除の優先度が高い未侵入水域では、定期的なモニタリング(現況調査)により侵入の有無を確認する必要があります。新たな侵入の有無や、侵入を検知した際の分布範囲の把握には、環境DNAを用いた調査が有効です。

これらの取り組みにおいては、行政機関、漁業関係者、民間団体等が連携し、地域全体で防除に取り組む姿勢を示すことが重要です。

② 逸出の防止

侵入水域は他水域への拡散源となる可能性があるため、以下の対策を講じ、オオクチバス等の逸出を防止することが重要です。

  • 増水時の流出防止
  • 放水または水抜き時の逸出防止
  • 他魚種の種苗への混入防止
  • 利用者による生存個体の持ち出し防止

(2) 被害の低減化

① 個体数低減化手法

平成17年の指針策定以降に蓄積された新しい防除技術や、被害低減化のための既存手法の改善ポイントは以下のとおりです。

  • 幼魚の捕獲: 群れを形成する幼魚は岸沿いに集まるため、たも網やさで網での捕獲が可能です。
  • 仔稚魚の捕獲: 遊泳を開始した仔稚魚等には、夜間のライトトラップが少ない労力で有効です。ただし、在来魚の混獲には注意が必要です。
  • 幼魚・成魚の捕獲: 投網などの既存手法に加え、水中に通電して捕獲する方法や、潜水による捕獲方法があります。刺し網や定置網を用いる際には、おとり個体やルアー等で誘引することで捕獲効率が向上する場合があります。
  • 繁殖抑制: 産卵床の破壊や産卵適地の減少、人工産卵を活用した卵の除去などの方法があります。ただし、これらの対策は、繁殖個体が新たな産卵床を作る可能性を十分に考慮した上で実施する必要があります。産卵床の探索には、水際線沿いの踏査だけでなく、ドローンによる上空撮影や水中ドローンの活用も有効な場合があります。
  • 水抜き・池干し: 対象水域によっては、ため池などの水を全て、または可能な限り抜いて干し上げる方法が効果的です。水抜き時には、流出口への逸出防止ネットの設置と、各種漁具による捕獲が必要です。

1) 防除手法の選択における留意点

個体数低減化手法は、漁具等による捕獲、繁殖抑制、水抜き・池干しなどに分類され、それぞれに様々な個別手法が存在します。各手法の詳細や注意事項(水中通電による捕獲は在来種への影響に十分配慮)、事例については、巻末の参考資料等をご参照ください。水域の規模や環境(湖、ダム湖、ため池、河川等)、捕獲時期によって有効な方法が異なるため、状況に応じた適切な手法を選択する必要があります。また、多くの捕獲方法は都道府県の漁業調整規則等で使用が制限されている場合があるため、事前に地元自治体の水産部局にお問い合わせください。

2) 防除の実施における留意点

  • 防除により捕獲したオオクチバス等は、原則として殺処分します。学術研究、展示、教育等の目的で生きたまま活用する場合は、防除主体が主務大臣から飼養等(国内での栽培、保管または運搬)の許可を得る必要があります。
  • 捕獲個体を飼養等する場合には、外来生物法施行規則に基づき、主務大臣が告示で定める基準に適合した飼養等施設で行う必要があります。なお、防除の際に水の入っていない容器に一時的に入れる行為は、速やかに死に至る状態であれば「保管」に該当せず、飼養等の許可は不要です。
  • 防除の実施にあたっては、漁業調整規則等の関連法令や内水面漁場管理委員会指示を遵守する必要があります。
  • 低密度化には長期間を要することがあり、一時的な密度低下で油断すると容易に回復する段階と、容易には回復しない段階があります。対象魚の生息密度に応じて適切な管理を継続するため、専門家の意見やマニュアル等を参考に計画的に実施することが重要です。
  • オオクチバス等の捕獲においては、効果と在来生物への影響を比較検討することが重要です。特に水抜き・池干しは、魚類、甲殻類、両生類、昆虫類、植物などへの影響が大きいため、実施前に希少種の生息・生育状況を調査・確認し、必要に応じて保護措置を講じるなど、在来生物への配慮が必要です。各種漁具の使用時にも、在来生物の混獲を減らす工夫が求められます。
  • 対象水域において、オオクチバス等と併せて生息抑制が必要な生物(オオクチバス防除で増加する可能性のあるアメリカザリガニ、ウシガエル、競合するチャネルキャットフィッシュ、生息環境が重複するアカミミガメ等)についても、併せて除去するなどの管理を検討する必要があります。
  • 複数の池が連続する水域で水抜きや池干しを行う場合は、オオクチバス等の下流への流出リスクを考慮し、基本的に上流側から実施することが効果的です。
  • 捕獲してその場で直ちに放す行為(キャッチ・アンド・リリース)は、外来生物法では規制されていませんが、地域の実情により自治体の条例や内水面漁場管理委員会の指示等で禁止されている場合があります。導入にあたっては、地域の状況や必要性を踏まえ個別に検討する必要があります。

② 環境改善対策

オオクチバス等の防除と並行して、水草やヨシ帯等の保全・回復を図ることで、在来生物の生息環境の復元・創出につながる環境改善対策を実施することが効果的です。

1) 環境改善対策の例

水抜きや池干し時に堆積土やゴミを除去し水質を改善すること、在来の魚類、甲殻類、昆虫類の繁殖場・生息場所となる沿岸植物帯を復元・創出すること、必要に応じて保護・増殖した在来生物の再導入や補強を検討することなどが挙げられます。

2) 環境改善対策の実施に際し、留意すべき事項

  • 専門家の意見や専門機関等のマニュアルを参考に、地域の特性に応じた手法を選択する必要があります。
  • 生物多様性保全を目的とした在来生物の再導入については、その是非、場所の選定、個体の選定(遺伝的多様性への配慮)、手順などについて、既存の知見や専門家等の意見を取り入れながら、十分な検討のもとに実施する必要があります。

③ 防除後の追跡調査

個体数低減化や環境改善対策の効果を検証するため、オオクチバス等の生息状況などの追跡調査を行う必要があります。

追跡調査には、主に標識放流による個体数推定と、単位努力量当たりの捕獲量から推定する方法があります。捕獲量の変化から推定する方法は、オオクチバス等だけでなく他の魚種の個体数も把握できるため、防除効果の検証に有効です。

また、捕獲した魚類の体長組成の変化や生殖腺の状態、胃内容物の解析なども、防除効果の検証やその後の対策立案に重要な情報となります。

環境DNA調査も有効であり、捕獲によらず比較的簡便にオオクチバス等の生息状況を把握できます。ただし、個体数が少ない場合には検出が難しくなることや、根絶に近い状態でもDNAが検出される可能性、他地域からの汚染などの課題もあるため、環境DNA調査の実施と結果の評価には専門家の協力や助言が必要です。

完全排除に成功した場合でも、獲り残しや再侵入の可能性があるため、追跡調査の継続が必要です。調査期間や方法は、地域の状況や水域の特性などを考慮し、既存の知見や専門家の意見を取り入れて設定する必要があります。

(3) 普及啓発

防除の効果を高めるためには、普及啓発(広報、パンフレット、マニュアル等の配布、ポスター、ステッカー等の掲示、対象水域での看板設置、マスメディアによる情報発信、研究・教育機関による啓発活動など)を通じて、外来生物や防除活動、違法放流の問題、遊漁のルールについて、地域住民や遊漁者の理解を深めることが重要です。漁業者等の関係者、地域住民や遊漁者による侵入監視や早期発見は非常に重要であり、広報等を通じて外来生物に対する正確な理解を促すことで、監視の目を養うことができます。

地域における防除の円滑な実施のため、関係者に防除への理解と協力を求めるとともに、防除の対象が「命あるもの」であることを考慮し、生き物と向き合う上での責任を意識した適切な個体の取扱いに留意して防除を進めることが求められます。

5. 防除実施計画の策定

(1) 計画策定の目的

オオクチバス等の防除活動を効果的・効率的に実施するため、各地域において防除実施計画(以下「計画」という。)を作成することが有効です。計画策定にあたっては、オオクチバス等の生息状況や地域の状況を踏まえ、科学的知見に基づいた適切な防除手法を検討し、目標達成に向けて計画的に防除を実施することで、効果的な被害防止に資することを目的とします。

特定外来生物であるオオクチバス等を生きたまま保管・運搬するには、外来生物法に基づく「飼養等許可」が必要です。しかし、防除実施計画を作成し、国および都道府県が防除の公示を行うこと、市町村が主務大臣の防除の確認を受けること、国および地方公共団体以外の者が防除の認定を受けることで、防除の際に生きた個体の運搬が可能になるなど、防除が実施しやすくなるメリットがあります。なお、捕獲してその場で直ちに殺処分する場合は外来生物法の規制対象外であるため、緊急的な防除を行う場合などに適用するなど、状況に応じて柔軟に対応することも必要です。

(2) 計画の記載項目

計画に記載する項目とその内容は以下のとおりです。ただし、地域の実情に応じて、普及啓発に係る事項等の記載項目を追加しても差し支えありません。

① 防除の目標

科学的な知見および各地の実施事例に基づき、適切な防除目標を設定するため、事前に当該地域のオオクチバス等の生息状況、被害状況等について必要な調査を行うことが望まれます。また、防除を実際に行う中で並行して調査し把握したデータに基づき、順応的に防除を進めることが必要です。

防除の目標としては、当該地域からの完全排除や被害の低減化について、オオクチバス等の生息状況、被害等の実態、地域の特性に応じた必要な事項を設定します。必要に応じて計画対象区域を複数の地区に分け、それぞれの地区ごとに目標を設定することも考えられます。

設定された目標については、防除の実施状況や追跡調査の結果を踏まえて随時見直しを行い、見直し予定時期についても計画に盛り込むことが望ましいと考えます。

② 計画区域

計画区域は、対象となる湖やため池、河川等の水際線を区域とするだけでなく、必要に応じ複数の水域を含んだ行政界や地形界を区域線として設定します。

計画の対象が行政界を越えて分布するような場合には、関係する自治体と整合のとれた目標を設定し、連携して生息抑制や管理を進めることができるよう、関係者間で必要な協議・調整を行うことが重要です。

③ 計画期間

計画期間は、地域の実情に応じ、生息動向等の変化に機動的に対応できるよう設定します。計画が終期を迎える際には、計画の達成度に関する評価を行い、その結果を踏まえて計画継続の必要性を検討し、必要な改訂を行います。また、計画の有効期間内であっても、計画の前提条件となるオオクチバス等の生息状況等に大きな変動が生じた場合等は、必要に応じて計画の改訂等を検討する必要があります。

④ 防除方法

上記の4(2)①および②の防除手法等について、防除の目標と地域の状況を踏まえて適切な手法を検討し、記載します。

⑤ 防除後の追跡調査

上記4(2)③を踏まえ、地域の状況、水域の特性などを考慮し、既存の知見や専門家の意見を取り入れて手法を検討し、記載します。

(3) 計画の策定方法

① 計画の策定主体

防除実施計画は、防除の実施主体が策定します。策定にあたっては、既存の知見を最大限に活用し、さらに防除の実施に賛同する学識経験者、関係行政機関、試験研究機関、漁業関係者、関係団体等の協力を得ます。その際、協議会等の場を設定して、防除実施計画の策定、防除実施方法についての検討、防除の評価等を行うことで、関係者の合意形成を図ることができます。

隣接した地域で別の防除主体による防除が行われる場合や、水系の上下流域で防除主体が異なる場合等については、防除主体同士で役割分担に係る調整や情報交換を行い、地域全体として効率的な防除を進めることに留意する必要があります。そのためには、関係する行政機関が地域の情報を収集・提供するなど、積極的な関与を行うことも重要です。

② 関係行政機関との調整

行政機関が有する地域計画や事業との整合性を図る観点から、防除主体は国の関係行政機関や関係地方公共団体と十分な調整を行い、必要な連携を図ることが重要です。

③ 水面の管理者等との調整

防除を行う水面の管理者等に対しては、防除の内容を説明し、理解を得ることが必要です。また、対象となる水域に漁業権が設定されている場合には、漁業関係者との調整も必要となります。

6. 実施体制の整備

(1) 実施体制の整備

地域全体として効果的な防除を推進し、防除の実効性を高めるため、外来生物法の責務規定を踏まえつつ、地域の実情に応じて関係する防除主体の役割を整理し、相互に連携を図りながら地域の関係者が一体となった実施体制を整備することが重要です。

  • 国: 全国的な観点から生物多様性保全上優先度の高い重要な地域において、他の主体の協力も得ながら対策を実施するとともに、地方公共団体の施策の支援、事業者、国民または民間団体による防除に向けた行動の促進のため、より効果的な防除手法の開発や知見の共有による技術的支援、漁業関係者が実施する防除活動への支援、普及啓発を行います。
  • 都道府県: 定着したオオクチバス等への対策について、市町村や漁業関係者を始めとする事業者等、地域内の関係主体を巻き込みながら、各地域におけるオオクチバス等による生態系や水産業等への被害の状況および動向その他の実情を踏まえて目標を定め、地域全体として効果的に推進します。
  • 事業者、国民および民間団体: オオクチバス等の外来生物に関する知識と理解を深め、外来生物を適切に取り扱うよう努めるとともに、漁業関係者を始めとする事業者および民間団体は、事業活動における防除の取組を通じ、国および地方公共団体が実施する施策に協力します。

(2) 関係機関・関係者との連携

防除の取組主体は、関係する行政機関との情報交換に努めるとともに、様々な関係者との連携体制を構築するほか、必要に応じて地域の大学、試験研究機関等と相互に連携を図ることが重要です。

また、外来生物法を踏まえ、国がオオクチバス等の全国の被害状況等に係る情報の収集、整理等を行う際に、地方公共団体等の防除主体においては防除の実施状況の報告や資料・情報の提供などの協力を行うことが求められます。

【参考文献】

  • 生物多様性の保全をめざした魚類の放流ガイドライン(放流ガイドライン、2005)(平成17年3月26日策定 日本魚類学会)
  • オオクチバス防除の手引き(平成21年3月作成(平成26年3月改訂)環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室)
  • 外来魚抑制管理技術高度化事業報告書(平成27年3月 水産庁、独立行政法人水産総合研究センター)
  • だれでもできる外来種駆除(平成27年3月 水産庁、国立研究開発法人水産総合研究センター・全国内水面漁業協同組合連合会 共編)
  • だれでもできる外来種駆除2(平成30年3月 水産庁、国立研究開発法人水産研究•教育機構、全国内水面漁業協同組合連合会)
  • だれでもできる外来種駆除3(令和3年3月 水産庁、国立研究開発法人水産研究・教育機構、全国内水面漁業協同組合連合会)
  • 令和4年度 伊豆沼・内沼における外来魚低密度管理を目指した捕獲等業務報告書(令和5年3月公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団)
  • 令和4年度河川水辺の国勢調査(令和6年2月 国土交通省水管理・国土保全局河川環境課)
  • 外来種に立ち向かう(令和6年2月水産庁)
  • 環境 DNA 分析技術を用いた調査手法の手引き(淡水魚類・両生類)第1版(令和6年5月 環境省自然環境局生物多様性センター)
  • 環境

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